ノーチェ
突然足を止めた薫に
あたしもその視線の先を追った。
ぐらり、と視界が歪む。
「勇人さん!」
――偶然、それともこれは必然?
どちらにせよ、あたしには酷な再会だった。
……どうして?
どうして桐生さんがここに?
「どうしたんすか、こんな所で!」
薫はコンビニの入口で踵を返して桐生さんに駆け寄った。
あたしはその場から動けずにただ、俯いて顔を背ける。
「ちょっとこの近くに用事があってね。
…薫は何でここに?」
「あぁ、俺はあいつん家で飲んでて。」
二人の会話があたしの耳をすり抜ける。
出来れば、出来る事ならば、耳を塞いでしまいたかった。
だけどそんな事を知るよしもない薫は
「莉伊!」とあたしを呼んで手招きをしてくる。