ノーチェ



突然足を止めた薫に
あたしもその視線の先を追った。

ぐらり、と視界が歪む。



「勇人さん!」


――偶然、それともこれは必然?




どちらにせよ、あたしには酷な再会だった。


……どうして?

どうして桐生さんがここに?




「どうしたんすか、こんな所で!」

薫はコンビニの入口で踵を返して桐生さんに駆け寄った。

あたしはその場から動けずにただ、俯いて顔を背ける。



「ちょっとこの近くに用事があってね。

…薫は何でここに?」

「あぁ、俺はあいつん家で飲んでて。」


二人の会話があたしの耳をすり抜ける。

出来れば、出来る事ならば、耳を塞いでしまいたかった。



だけどそんな事を知るよしもない薫は

「莉伊!」とあたしを呼んで手招きをしてくる。



< 181 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop