ノーチェ


そんなあたしに
眉を下げた桐生さんはブラックコーヒーを一口飲んで言った。


「もう隠れて会う事もないだろう。」

「……え?」


彼の口から煙がふわっと浮かんで、あたしは瞬きをする。




「女房の弟の女、って言えば誰だって俺達を疑ったりしない。」

セブンスターの香りが
薫を思い出させた。




嫌いな、セブンスター。

薫が吸う度に、桐生さんを思い出して。
胸が、苦しくて。




だけど、今は薫を思い出す香りに変わってる。



でも、それは
そうゆう深い意味じゃなくて―――…



「あたしと薫は…、」

切り出すと、桐生さんの視線があたしに向けられる。




「…ただの、友達です。」


あたしが好きなのは
桐生さん、あなただけ。




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