ノーチェ
…視線の、行方
「莉伊!」
手を振る菜月にあたしは静かに笑い掛ける。
シャッターの閉まった花屋の前で、暗くなった夜の街を二人で歩いた。
「久々だねー、莉伊と二人でご飯食べに行くの!」
「菜月が啓介くんばっかりだったからね。」
「もー、それは言わない約束でしょ!」
あははっ、と二人の笑い声が通りに響く。
今日、仕事が休みだった菜月。
昼間は啓介くんと過ごしたみたいだ。
「でも、夜も啓介くんと一緒に居なくてよかったの?」
「うん、どうせ夜はアクアだしー。」
そっか、と頷いて
よく菜月と二人で訪れていたパスタ屋に足を踏み入れる。
地下に続く階段を降りる菜月のパンプスが音を立てた。
あたしもそれに合わせて階段を降りる。