ノーチェ

…視線の、行方




「莉伊!」

手を振る菜月にあたしは静かに笑い掛ける。


シャッターの閉まった花屋の前で、暗くなった夜の街を二人で歩いた。


「久々だねー、莉伊と二人でご飯食べに行くの!」

「菜月が啓介くんばっかりだったからね。」

「もー、それは言わない約束でしょ!」


あははっ、と二人の笑い声が通りに響く。



今日、仕事が休みだった菜月。

昼間は啓介くんと過ごしたみたいだ。



「でも、夜も啓介くんと一緒に居なくてよかったの?」

「うん、どうせ夜はアクアだしー。」


そっか、と頷いて
よく菜月と二人で訪れていたパスタ屋に足を踏み入れる。

地下に続く階段を降りる菜月のパンプスが音を立てた。



あたしもそれに合わせて階段を降りる。



< 187 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop