ノーチェ
席に着くと、メニューを開いた菜月が
長く伸びた髪をかき上げた。
緩やかに巻かれた彼女の髪の毛。
最近、菜月は雰囲気が変わったと思う。
膝丈の白いフレアスカートに、水玉の大きなリボンが胸元についた紺のカットソー。
前は派手な服装を好んでいたのに、今は大人しい服を着るようになった。
きっと、啓介くんの影響もあるだろうけれど
彼女自身の心が、安定してきているのかもしれない。
そんな菜月を見て
ふいに笑顔がこぼれる。
「莉伊、決まった?」
「あ、うん。」
そのまま注文を済ませ、先に頼んでおいたワインを乾杯すると
菜月がおもむろに口を開いた。
「…莉伊、あたしね?」
「うん、何?」
真っ赤なワインが
菜月のグラスの中で揺れる。