ノーチェ
そして意を決したのか、菜月は涙を止めて小さく呟いた。
「今日ね、啓介に…。」
「……うん。」
チクリと胸が痛む。
聞くのが何だか怖い。
グラスの中で
不安気に顔を歪めた菜月が真っ赤なワインに揺れた。
「……プロポーズ、されたの…。」
「…へっ!?」
プ、プロポーズッ!?
「…莉伊、あたし…。どうしたらいい…?」
って、ちょっと待って!
「ええぇぇええぇえ!?」
一呼吸置いて
あたしは店内に響き渡る程の叫び声を上げ、立ち上がった。
「プ、プロ、プロポーズ!?」
「ちょ、莉伊!声大きいよぉっ!」
慌てふためくあたしを落ち着かせようと菜月も立ち上がる。
店中の人の視線に気が付いたあたし達は
おずおずと静かに座り直した。