ノーチェ
「だ、だって!急に菜月がプロポーズとか言うからっ!」
「だから困ってるんじゃん!」
向かい合わせで顔を近付けて話す。
「困ってるって、何でよ?」
てっきり悪い話だと思っていたから、菜月の言う事が理解出来ない。
好きなら、プロポーズされて嬉しいのが当たり前なんじゃないの?
何だか肩の力がふっと抜けて、張りつめていた空気が一気に解けられた。
「…そりゃあ、嬉しかったよ。けどね?」
「けど?」
すっかり忘れていたワインの存在に気付き、あたしは一口それを含む。
「…不安、なの。」
「え?」
――不安?
何が?と聞こうとしたそのタイミングで
注目したパスタがあたしと菜月の前に置かれる。
クリームソースの香りがあたしの食欲を誘った。