ノーチェ
菜月の持つフォークがスプーンの上でくるくると綺麗にパスタを巻いてゆく。
「…ほら、啓介ってアクアの経営者でしょ?」
「うん。」
もう巻ききれているのに菜月はまだフォークを回す手を止めない。
「経営が安定してる訳じゃないし…。何か、このまま結婚していいのかなぁ…なんて、思っちゃってさ。」
「……そっか。」
そこまで聞いてやっと、菜月の涙の意味が理解出来た。
…不安、だよね。
結婚は一生の問題だし、『好き』って気持ちだけじゃ一緒になれない事
菜月は不安を抱えながらちゃんと考えてるんだ。
みんな、色んな事に葛藤しながら生きてる。
不器用で、繊細で。
見えない未来が
こんなにもあたし達を不安定にさせるんだよね。