ノーチェ


「…でもさ、」

と口を開き、パスタを食べる手を止めたあたしは

「自分の気持ちに素直になるべきだよ。」

そう言って菜月を見た。




「後悔なんて、しない人生にしたいじゃん。」

相手を想う気持ちは、きっと誰にも止められないから。




「啓介くんの事、本気で好きなら…ずっと、一緒に居るべきだよ。」

苦しくても、辛くても。



誰かを想う気持ちは
きっと、無駄じゃない。


泣いて、傷ついて
それでも、好きなんだもん。




「莉伊……。」

「ね?だから泣かないでさ、啓介くんにちゃんと返事しなよ?」


あたしの言葉に、再び涙をこぼした菜月は

「……うん…。ありがと…。」

小さく、呟いた。



「もーまた泣くっ!」

「だって、莉伊がぁっ!」


あはは、と笑うと
潤んだ瞳で、菜月も笑った。





誰もが弱くて、誰もが脆い。

それでも、生きていかなきゃ。




――幸せに、なる為に。



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