ノーチェ
生きる事は難しい。
誰もが上手く生きられなくて。
だけど
『たった一人』の人に出会えたら
それだけで、きっと。
自分の運命も、幸せも
変えてゆけるんだ。
―――――……
「結婚…、ねぇ。」
ウォレットチェーンが鳴って、煙草の煙が宙に浮かぶ。
「…何か、薫オヤジくさいよ。」
向かい合う薫を見て
ふふ、と笑った。
あれから2日後。
薫は、あたしん家に度々訪れるようになった。
そして今ちょうど
菜月と啓介くんの話をしていたところ。
二人は来年、結婚するんだって。
「何かますます居ずらいんだよなぁ。」
「あはは、そうだね。」
顔をしかめて溜め息を吐く薫は、煙草を灰皿に押し付けて消す。