ノーチェ
「でもまぁ、めでたいよな。」
「うん。」
二人で笑って、缶ビールを飲む。
テーブルには、薫の為に購入した丸いガラスの灰皿。
もはや、この部屋のインテリアとして既に馴染んでいる。
薫を家にあげる事は少し気が引けたけど、今はもう考えない事にした。
桐生さんに対して悪い、そう思っていても
あたしと彼の関係の方がもっと罪深い。
――何よりも、あたしは薫と過ごす時間が好きだったから。
「薫、お腹空いてない?何か食べる?」
「あー…、じゃあ何か食う。」
その返事を聞いて
あたしは立ち上がって台所に向かうと
冷蔵庫の中を物色する。
「簡単なものでいい?」
「あぁ、わりぃ。」
顔だけこちらに向けた薫に笑顔を返して
あたしはオムライスを作り始めた。