ノーチェ


鶏肉を解凍してる間に玉葱を切る。

部屋の中には
まな板に包丁がぶつかる音と、薫が見てるテレビから漏れる笑い声が響いていた。



そしてちょうど玉葱を切り終えた時。


「莉伊、お前の携帯鳴ってんぞ。」

「えー、電話?メール?」

手が離せないあたしは
フライパンを持って薫に尋ねた。

そして冷蔵庫からタマゴを二つ取り出す。




問い掛けにソファに投げてあったあたしの携帯を手に取った薫が

「電話。……K?」

そう、小さく呟く。



その言葉に、あたしの心臓が弾けるように高鳴った。



「ダ、ダメッ!」

台所から飛び出したあたしは携帯を薫の手から奪い取る。

冷蔵庫から取り出したタマゴが、床に落ちて割れた。



あたしの手の中では
携帯が震えてる。

だけどもしかしたら
震えてるのはあたしの体かもしれない。



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