ノーチェ
「おかえり。」
「……ただいま。」
まるで同棲してるような言葉を交わして部屋に戻ると、作りかけだったはずのオムライスがテーブルに二つ並んでいた。
「…これ、もしかして薫が作ったの?」
「言っとくけど、すんげぇ上手いから。」
先程までの気まずさをかき消すようにふざけた薫に、少しだけ心が救われたような気がする。
台所で落として割れてしまったはずのタマゴも、既に跡形もなく片付けられていた。
「…座れば?」
「あ、うん…。」
ここはあたしの家のはずなのに、薫に促されて床に座る。
そして薫が作ってくれたオムライスを一口、スプーンで運ぶ。
「な?上手いだろ?」
「…うん、おいしい。」
少しだけ冷めたオムライスはいつもあたしが作ってるのとは違い、見事なまでの出来栄えだった。