ノーチェ


視界の全てがモノクロになって、世界の色があたしの瞳から消えた。



「……あたしが…?泣きそう…?」

薫の言葉が、上手く整理出来ない。



「…本当はお前だって、行かない方がいいって思ってるんじゃねぇの?」

「そんな事……っ!」


そんな事、思ってない。

思ってなんかない。




なのに、どうして――…


どうして、涙なんか出るの?





「莉伊…、」

「…っやだ!」

ふいに伸ばされた薫の手を振り払う。



「そんな事、思ってる訳ないじゃないっ!あたしは彼が好きなの!ちゃんと、彼の事好きだもんっ!」

「莉伊っ!」



言い終えると同時にカバンと携帯を掴んだあたしは、そのまま玄関に走って外に飛び出した。



< 204 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop