ノーチェ
視界の全てがモノクロになって、世界の色があたしの瞳から消えた。
「……あたしが…?泣きそう…?」
薫の言葉が、上手く整理出来ない。
「…本当はお前だって、行かない方がいいって思ってるんじゃねぇの?」
「そんな事……っ!」
そんな事、思ってない。
思ってなんかない。
なのに、どうして――…
どうして、涙なんか出るの?
「莉伊…、」
「…っやだ!」
ふいに伸ばされた薫の手を振り払う。
「そんな事、思ってる訳ないじゃないっ!あたしは彼が好きなの!ちゃんと、彼の事好きだもんっ!」
「莉伊っ!」
言い終えると同時にカバンと携帯を掴んだあたしは、そのまま玄関に走って外に飛び出した。