ノーチェ
…光と、影
夜に、光も影もない。
ただ、全てを黒く塗りつぶす。
多くは望まない。
だからあたしを、全て溶かして。
闇に、葬って。
―――――…
高層ホテルの最上階。
窓の外に散らばる光に
あたしはそっと手を添える。
その時、背後から扉の音がしてあたしは振り返った。
「…どうした?」
「……ううん、何でもないよ。」
腰にタオルを巻いた桐生さんは、お風呂上がりのほてった顔を綻ばせた。
そしてそのまま煙草へと手を伸ばす。
「…桐生さん、」
あたしの呼び声に
彼は濡れた髪をかき上げて答える。
「今日は、帰らなくても…いいの?」
それは問い掛けと言うよりも、どちらかと言えばあたしの願い。
まだ、帰らないで。