ノーチェ
あの後、二人から薫の仕事が決まったと聞いた。
元々、料理が好きだった薫はそれを仕事にしたみたい。
そう言えば、最後に会ったあの日
薫が作ってくれたオムライスは、そこら辺で食べるオムライスよりも美味しかった。
薫らしい選択だと思う。
それからアクアを出た薫はここから少し離れた隣町で一人暮らしを始めたと、啓介くんが教えてくれた。
「あいつ、すげぇ頑張ってるみたいだよ。」
「…そっか。」
……よかった。
なんて、あたしが安心するのはおかしいけれど
薫には、どうしても幸せになってもらいたい。
例え、もう二度と
あの笑顔に触れられないとしても。
薫には、夜のように穏やかな幸せを感じてもらいたいんだ。
――絶対に。