ノーチェ
…想い合う、心
グラスにシャンパンが注がれてゆく。
炭酸の泡が浮かんで水面でそっと弾けて消えた。
百合子さんのグラスに注がれたシャンパンを見届けると、次にあたしの前に置かれたグラスに店員が向かってきて
「…あ、あたしは、いいです。」
と丁重に断った。
「お飲みにならないの?」
「はい、今日友達の結婚式で、少し飲んできたので…。」
そう、と優しく微笑んだ百合子さんは黒髪を耳に掛けて、シャンパンを喉に流し込む。
その一挙一動が美しくてつい見入ってしまった。
きらびやかなシャンデリアに、全てに手入れが施された食器。
ここは以前、百合子さんが誘ってくれた食事会をした場所。
――百合子さんと桐生さんの関係を知ってしまった、あのレストランだった。