ノーチェ
その名前が、あたしの罪悪感を増長させてゆく。
それは、自分の力じゃ拭い切れない程に広がっていって。
「あなたが帰った後、薫一言も喋らなくなっちゃって…。」
「……そう、だったんですか…。」
ぎゅっと手を握ると
溢れそうな思いを押し殺した。
―『俺はお前を、そんな風に思った事ない。』
あの日の薫の瞳。
あれは、傷ついてる時の瞳。
こんなに苦しいのは
あたしだけじゃない。
ううん、もしかしたら
あたし以上に、薫は傷ついてる。
俯く視線の先がぼやけて見えた。
だけど、ここであたしが泣いてしまったら
また百合子さんに迷惑かけちゃうから。
だから、あたしは顔を上げて真っ直ぐに百合子さんへ視線を合わせた。