ノーチェ
そんなあたしの決意が見えたのか、百合子さんはもう一度だけ笑顔を向けて、静かに言った。
「ああ見えて、薫…。本当はとても傷つきやすいの。」
「……………。」
キラリと輝いた百合子さんの薬指。
だけど、もう
あたしは傷ついたりなんかしない。
「薫が仕事を始めた事はご存じ?」
「…はい、友達から…。」
そう答えると、百合子さんは小さく溜め息をついた。
「…薫、あなたに会わなくなってからは、こっちが心配になるくらい仕事にのめり込んでてね。」
「…そうなんですか…。」
窓越しに見えるネオンの光に視線を移した百合子さんが少しずつ、笑顔を曇らせてゆく。
「……私には、もうこれ以上、薫を支えてあげられないから…。」
…――――え…?