ノーチェ
「……百合子さん…?」
どうゆう、意味?
あたしの呼び掛けに、再び視線をこちらに向けた百合子さんは
「薫の事、どうかよろしくね。」
と、いつもと変わらない笑顔を投げた。
その笑顔に
深い意味が込められてるなんて…。
「薫、あなたの事…とても大切に思ってるから。」
「…でも、あたし……。」
その時、あたしは気付けなかった。
「…あなたにしか、こんな事頼めないの。」
「……………。」
黙り込んだあたしに、百合子さんは続けて口を開いた。
「大丈夫よ。薫は、今もあなたを想ってるはずだから。」
「………はい…。」
――どうして、気が付けなかったのだろう。
百合子さんの言葉の意味を。
笑顔の意味を。
全てはきっと、夜の闇だけが知っていた。
全てを溶かす、この夜だけが。