ノーチェ


そんなあたしに

「バカだな、お前。俺の腕前なめんなよ。」

と意地悪そうに笑ってみせる。



「特に俺のオムライスは超絶品だから。」

「普通、自分でそうゆう事言う?」

うるせっ!と憎まれ口を叩く薫に、あたしは声を上げて笑ってしまった。



「ま、一流になったらそん時はお前を一番最初の客にしてやるよ。」

冬の澄んだ空気は
どこまでも声が響き渡るよう。

そんな柔らかい薫の言葉があたしの耳に届いた。




それはとても儚くて
とても甘美な言葉に感じる。


だからこそあたしは

「……うん。」

としか、返事が出来なかった。



例え、その言葉が叶わないとしても
薫がくれた優しさが、あたしをずっと強くしてくれるから。


それだけで、もう十分だよ。



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