ノーチェ


立ち上がった薫は
再び煙草を取り出して火を付ける。

そのほのかな明かりが、薫の綺麗な横顔を浮かばせた。



「な、泣いてなんかないし!」


慌てて涙を拭うと

「強がってんなって。」

そう言って、薫がまた憎まれ口を言う。



「もぉ!薫の目、ふしあななんじゃない?」

「お前に言われたくねぇな。こんなかっこいい男を振るなんてよ!」

「だから、自分で言わないでよねー!」

ふん、と顔を背けるとあははと薫の笑い声が響いた。

その笑い声にあたしの顔もつい、緩んでしまう。



「つーか、寒くね?アクア戻ろうぜ。」

「んじゃ、ダーツで勝負ね。負けたらウォッカ一気!」

「お?随分強気じゃん。俺に勝てると思ってんの?」

「当たり前じゃん!」

歩幅を合わせて二人で歩き出す。

今まで以上に
二人の絆が強まったような気がして。



触れ合う心が、あたし達を優しく包んでた。



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