ノーチェ
…見えない、心
……………
「んーっ!いい天気だねっ!」
冬の柔らかい日差しに
菜月が体を伸ばす。
あたしは帳簿を付けながら
「そうだね。」と返事を返した。
花の香りが充満する店のカウンターで
あたしは電卓を叩く。
菜月は店先に並べてある植木に、水ををあげていた。
穏やかな冬の昼間。
吹き付ける風はまだ冷たいけれど、どこか春を予感させる優しい香り。
この季節が一番、あたしは好き。
「ねぇ、莉伊!」
水まきを終えたのか、カウンターに走り寄ってきた菜月に視線を上げると
「今日、うちに来ない?」
そう言って、瞳を輝かせる。
「来ない?って、しょっちゅう行ってるじゃん。」
と返すと、菜月は首を振って言った。
「違うよ、うちにご飯食べに来ない?って事!」