ノーチェ
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グツグツと沸騰する鍋に白菜、えのき、春菊などを放り込んでゆく。
立ち込める湯気に、ほのかな野菜の香りが部屋に広がった。
菜箸で均等に火が通るようにかき混ぜていると、不機嫌そうな菜月がドカッと前に座って唇を尖らせる。
「てゆーか、何で鍋なのぉ!?」
「しょうがないだろ。薫が日本食が恋しいって言うんだから。」
「でもせっかくみんなにあたしの料理披露しようと思ってたのにぃ!」
鍋じゃあたしの料理の腕前が伝わらないじゃん!
なんて言いながら駄々をこねる菜月に、あたしと啓介くんが笑った。
「じゃあ今度、菜月の手料理食べに来るよ。」
「絶対だからね、莉伊!」
前のめりになる菜月に小さく頷いて、あたしは時計に視線を向けた。