ノーチェ
「薫、遅いね。」
と呟くと、手際よくお肉やカキを並べた啓介くんが
「さっき駅に着いたって連絡あったから、もうすぐ来ると思うよ。」
と笑って教えてくれる。
「でも薫くん、すごいよね!本場のイタリアンを勉強しに、一人でイタリア行っちゃうなんてさ!」
「まぁ、菜月には無理だろうな。」
「うん、菜月には無理だね。絶対、一日で泣いて帰って来るよ。」
あたし達の言葉責めに、「なによーっ、二人してっ!」と顔を真っ赤にした菜月がいじけてしまった。
あはは、と部屋に笑い声が響く。
そんな他愛ない話をしてると、ふいに開かれた店内の扉。
みんなの視線が一点に集まった。
「お前ら、声デカすぎ。外まで響いてるぞ?」