ノーチェ


2月の風があたしの頬や体を吹き付ける。

さっきまで鍋であったまってた顔も、一瞬にして冷たくなってしまった。



あたしは服の袖を引っ張って、少しでも寒さを防ごうと手を丸めながら

着信履歴から【K】を選び、桐生さんに電話を掛ける。



長いコールが続き、電話を持ってない手で腕を擦った。


『……莉伊?』

電話越しに聞こえたのは既に聞き慣れた、あの低い声。



「…桐生さん?ごめんなさい、さっき出られなくて…。」

『いや、大した用事があった訳じゃないから。』


その言葉に、あたしはごくりと唾を飲み込んだ。




そう、あたしは言わなきゃいけない。

ちゃんと、ケジメをつけなきゃ。



あたしの為にも
そして、薫の為にも。




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