ノーチェ
「彼と、別れてくる。」
あたしも、ちゃんと自分の幸せを見つけたい。
その為には、薫。
あなたが必要なんだ。
「別れてくるから。」
だから、もう少し。
もう少しだけ、あたしに時間を下さい。
「…莉伊、お前……。」
目を丸くした薫に、ふと我に返ったあたしは
「な、菜月、大丈夫かな!?」
妙に恥ずかしくて、視線を逸し立ち上がった。
これじゃ、まるで
遠回しに『別れるまで待ってて』と言ってるようなもんだ。
熱くなる顔が、あたしの心臓を高鳴らせる。
「莉伊、」
だけど、薫はそんなあたしの腕を掴み、逃がしてはくれない。
あたしは振り返らずに、掴まれた腕の強さに俯いた。
「…信じて、いいんだよな?」