ノーチェ


「彼と、別れてくる。」


あたしも、ちゃんと自分の幸せを見つけたい。

その為には、薫。




あなたが必要なんだ。




「別れてくるから。」

だから、もう少し。



もう少しだけ、あたしに時間を下さい。






「…莉伊、お前……。」

目を丸くした薫に、ふと我に返ったあたしは

「な、菜月、大丈夫かな!?」

妙に恥ずかしくて、視線を逸し立ち上がった。


これじゃ、まるで
遠回しに『別れるまで待ってて』と言ってるようなもんだ。

熱くなる顔が、あたしの心臓を高鳴らせる。




「莉伊、」

だけど、薫はそんなあたしの腕を掴み、逃がしてはくれない。


あたしは振り返らずに、掴まれた腕の強さに俯いた。




「…信じて、いいんだよな?」




< 251 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop