ノーチェ
………………
「お疲れ様でしたー。」
マフラーを首に巻き付けながら、店長に頭を下げる。
腕時計に目を向けると
針は待ち合わせの時間より少しだけ過ぎていた。
…急がなきゃ。
焦る気持ちを押さえ、夜の街へと足を向ける。
「莉伊ーっ!」
ふいに来た道から声が聞こえて振り返ると
「もう帰るの?」と菜月が駆け寄ってきた。
「何か急ぎ?」
「うん、ちょっと待ち合わせしてて。」
あ~、と唸った菜月はニヤリと口の端を上げて
「薫くん?」
と耳打ちしてくる。
「違うよ!もう、菜月はすぐ薫に結びつけようとするんだから。」
「あはは、冗談だよぉ!そうゆう事なら、また今度でいいや!」
「何?どうかしたの?」