ノーチェ


あたしの問い掛けに、こっそりと耳打ちをした菜月。

それを聞いて

「あぁ、そっか!」と、大切な事を思い出す。



一週間後の2月14日。

バレンタインデー。



菜月は啓介くんに内緒でチョコレートを作るらしい。

その為の材料やラッピングを買いに行くのを付き合って欲しい、とお願いされたのだ。




「明日でもいい?」

「うん!わかった。急いでるのにごめんね!じゃあねーっ!」


幸せそうな笑顔を振り撒いて、菜月は来た道を戻り始めた。


そんな菜月の後ろ姿を見届けて、あたしも再び歩き出す。




続く道の先に、胸に抱えた決意を

桐生さんに伝える為。


ちゃんと言えるかな。

わずかな不安が頭を過ぎる。


だけど、上手く言えなくてもいいんだ。

涙で彼が見えなくなったとしても、これはお互いの為の選択なんだから。



泣いたって、傷ついたって

それでも構わない。




例え、彼に嫌われたとしても。




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