ノーチェ
「で、その話って?」
紫煙が彼の周りに浮かんで、桐生さんが煙に隠れた。
「…あのね、あたし…。」
バカじゃない、あたし。
何今更、躊躇ったりしてるんだ。
口にすれば、この関係は終わる。
わかっているのに、いざ口を開こうとすると
言葉が喉に引っ掛かってなかなか出て来ない。
でも、怖かった。
今日の桐生さんは、まるであたしが今言おうとしてる事をわかっているような、そんな視線を投げてくる。
「……あたし…、」
なかなか出て来ない言葉に、深く深呼吸をしたその時。
ピリリ、と携帯の機械音が部屋に鳴り響いた。
「悪い、電話だ。」
そう言った桐生さんは携帯を手に立ち上がると
あたしに背を向けたまま話を始めた。