ノーチェ
…背負う、罪
「……莉伊?」
視界がぼやけてゆく。
次いで聞こえたのは突き抜けるような耳鳴り。
―――どうして……。
瞬きもせずに、あたしは今目の前に立つ彼を凝視する。
それは、あたしを見下ろしてる彼も同じで。
「薫、とりあえず座りなさい。」
彼の後ろから顔を出した桐生さんは、いつもと何ら変わった様子もなく薫の肩を叩いた。
「…何で、莉伊がここに…?」
今にも消えそうな声で
あたしではなく、桐生さんに問い掛けた薫。
その言葉を流すようにあたしの前のソファに腰を降ろした桐生さんは
ワイシャツの胸ポケットからセブンスターを取り出した。
静まり返るホテルの一室で、桐生さんがつけたマッチの音だけが響く。