ノーチェ
「…俺には、莉伊…。君が必要なんだ…。」
そう言って、あたしを抱き締める桐生さんの肩が震えていた。
……あぁ、そうか。
苦しかったのは
あたしだけじゃない。
薫だけじゃない。
――桐生さんも、同じ。
同じ罪を背負いながら
それでも、百合子さんの一番傍に居たのは
桐生さんだったんだ。
震える腕を、そっと持ち上げる。
そして、同じように体を震わせてる桐生さんの背中に腕を回した。
その瞬間、あたしを抱き締める力が強まって。
「―――っ!」
二人の鼓動が、溶け合っていった。
……神様。
傷つく事を恐れて生きてなんていけないけれど
それでも、どうか。
どうか、傷ついた分の幸せを、みんなに。
背負う罪も
傷つけ合った罰も
全て、この残酷な夜に葬って。