ノーチェ
どうすればいいか、なんてそんな事いくら考えたって答えは出なくて。
出てくるのは渇いた溜め息と、罪の涙だけ。
もう、何が現実で
何が嘘なのか、それすらわからない。
『…今の言葉、俺…信じていいんだよな?』
わかっているのは
あたしは薫を、裏切ってしまった事。
いつかは言わなきゃいけない、そう思ってた。
だけど
あんな形で薫に知られたくなかったのに。
また一つ、涙がこぼれそうになって
一気に水を飲み干したあたしはそのグラスをシンクに置いた、その時。
…ピンポーン、と
部屋に鳴り響いたインターホン。
誰だろう…。
顔をあげて、朦朧とした頭で玄関に向かった。
「…はい、どちら様ですか?」
力のない声で扉に口を開いたあたし。
「……俺、だけど。」
――――え?
聞き覚えのある声に慌てて扉を開けると
「……何で…?」
そこには、コンビニの袋を持った啓介くんが立っていた。