ノーチェ
…枯れた、花
………………
晴れた冬の空に
煙突から煙が浮かんでゆく。
それは、あまりに突然の出来事だった。
『百合子が――…』
震えた桐生さんの声に
あたしの手にあった携帯は、音を立てて床に落ちて。
次の日、黒い喪服姿で迎えに来てくれた啓介くんに、これは現実なんだと思い知らされた。
『まだ27歳なのに…』
『結婚したばかりなんですってよ…』
『お気の毒に…』
涙で濡れる参列者を抜けて、御線香の煙が立ち込める中
礼服に身を包んだ薫が俯いたまま、立ち尽くしてるのが見えた。
その瞳は光をなくし、参列者一人一人に頭を下げる姿は
酷くあたしの心を痛ませる。
そして、薫の隣には
凛とした表情で喪服を着た桐生さんがあたしを見つめていた。