ノーチェ
雲一つない青空。
太陽が浮かぶ空に、百合子さんの笑顔が見えたような気がした。
『薫の事、どうかよろしくね。』
……百合子さん。
あなたはあの時
全てをわかっていて
あたしに笑ってくれた。
なのにあたしは
あなたとの約束さえ、果たせそうにありません。
薫はもう、あたしを見てはくれない。
あたしを、映してはくれないんだ。
……気が付いた時には遅い。
よく人は、そう言うけれど
気が付いていたとしてももう、遅い。
初めから、全て
間違っていたんだから。
「……バカだな、本当。」
手の平を見つめて、小さく言葉を吐き捨てる。
そんな時、聞こえた足音にゆっくり顔を横に向けると
「こんな所に居たのか。」
人目を避けるように桐生さんが歩み寄ってきた。