ノーチェ
そう、あの時。
啓介くんにプロポーズされて、悩む菜月にあたしが言った言葉。
『後悔なんて、しない人生にしたいじゃん。』
「でも今、莉伊後悔してるんじゃない?どうしてこうなっちゃったんだろう、どうして苦しいんだろうって。」
菜月の言葉は、まさにあたしが思ってた事、そのものだった。
だけど気が付かないフリして、そんな自分に嘘をついて。
一人でも大丈夫だって、言い聞かせてた。
だけど――――…
「ねぇ、莉伊。莉伊は一人じゃない。」
そう、あたしは一人なんかじゃなかった。
いつだって、あたしの背中を押してくれてる人は居たんだ。
でも、苦しくて。
「……あたし、薫を傷つけちゃったから…。」
口を開いて出たのは、懺悔の言葉と涙だった。