ノーチェ
立ち上がった菜月は
「ほら、もう泣かないで?泣く前に、する事があるんじゃない?」
そう言って、あたしの手を引き立ち上がらせた。
「ね?泣いてたら、せっかくの美人が台無しだよ!」
ポンと力強くあたしの肩を叩く。
ずっと永い間、あたしの心を支配していた悲しみが、すっと抜けていくような感覚。
「……菜月、」
それは、あたしの心を軽くしてくれて。
「ん?」
再び、あたしに笑顔をくれた、菜月のおかげだった。
「…ありがとう。」
伝えきれない、感謝の言葉。
そう、あたしにはこの言葉を伝えなきゃいけない人がいる。
後悔なんて、してるだけ無駄なんだよね?
「うん!頑張ってっ!」
夏の向日葵のような、菜月の笑顔。
あたしはその笑顔に微笑んでカバンを肩に掛けると、ロッカールームをあとにした。
溢れるような想いを抱えて。