ノーチェ


だけど言葉に詰まったあたしより先に口を開いたのは、桐生さんだった。



「もう、終わりだな。」

「…え……?」

紫煙が桐生さんとあたしの間に浮かぶ。



「それを、言いに来たんだろう?」

「……桐生さん…。」


あたしはまた、誰かに頼ってしまった。

本当はあたしが言わなくちゃいけないのに。



いつもあたしは、色んな人に助けられて生きてきたんだと、この時改めて思った。



優しくて、大人で。
いつも気丈でいて、穏やかで。



「…もう、行きなさい。俺も仕事に戻らなきゃいけない。」

なのに、今日の桐生さんは自分の気持ちを押し殺そうとしてるように見えて。



「……っ、桐生さん!」

最後の最後まで、あなたは紳士に振る舞おうとしていたんだ。



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