ノーチェ
そしてあたしも一足遅れて喫茶店を出ると
その足で、再び走り出した。
今、一番会いたい人の元へ。
――今、一番
伝えたい言葉を、届ける為に。
…………………
ピンポーン…
静まり返った住宅街の一角。
あたしはあるアパートの部屋の前でインターホンを鳴らす。
……まだ、帰ってきてないのかな…。
それとも……。
嫌な予感が過ぎって、それを振り払うように頭を振ったあたしは
そのアパートの前で腰を降ろした。
3月とは言え、春を迎える直前の風はまだ冷たくて。
だけど、それはこの夜に溶けて優しくあたしを包み込む。
――早く、会いたくて。
今度こそ、ちゃんと伝えなきゃいけない。
ずっと胸の中にあった
あたしの想い、全てを。
この、夜にあなたへ。