ノーチェ
「…好き。あたし、薫が好きだよ。」
そう、あたしは。
自分の背負う罪、そして薫を傷つけ、裏切った自分が幸せになっちゃいけないんだって
ずっと思ってた。
だけど、本当は。
一番、あたしを赦せなかったのは、自分自身だった。
自分を赦せないなら、薫があたしを赦してくれるはずがない、そう思ってた。
だけど、薫。
それは違うよね?
「…薫が、好き。」
罪は赦されるものじゃない。
――罪は、償うものなんだ。
「……莉伊…。」
視線が絡み合う。
薫の揺れる瞳に、あたしが映る。
それは、一体
どのくらいの時間だったんだろう。
だけど薫の瞳は、やっぱりあたしに優しかった。
出会った時からずっと。
薫があたしを見る瞳は
優しさで溢れてた。