ノーチェ
通り雨がザァっと店のガラスを吹き付けた。
「何、急に。雅哉くんと何かあった?」
梅雨時の閑散とした店内に菜月とあたしの声だけが響き渡る。
枯れかけたチューリップを手に取った菜月は
「なーんか、本命が居るっぽい。」
そう呟いてゴミ箱に花を捨てた。
雅哉くんとは
この前あたしが無理矢理行かされた合コンの時
菜月といい感じだった男の人。
あれからすぐに菜月は雅哉くんと付き合う事になった。
あたしはその彼に対していい印象は持てなかったけど
菜月はどうやらすっかりぞっこんの様子。
強がっているけど
菜月の揺れる瞳は嘘を付けない。
「昨日、一回も連絡なかったしさ。一緒に居る時も、女からの着信ばっかりなんだよね。」