ノーチェ
「こんにちわ、」と日本人形のような黒髪を揺らして彼女が笑った。
「あ…、いらっしゃいませ…。」
改めてそう言うと
髪を耳に掛けた彼女はグルリと店を見渡した。
ワンレンの髪の毛を上げる彼女の横顔は
やっぱり雪のように白くて今にも溶けて消えてしまいそう。
そして薔薇の前に立った彼女は
「この前はありがとうございました。とても素敵な花束だったわ。」
と目を細める。
淡い水色のワンピースから伸びる真っ白な腕と
真っ赤に染まった薔薇がまるで絵画のようによく似合ってた。
一通り店に置いてある花たちを見渡す彼女。
どうやらこの様子だと花を買いに来たんじゃなさそうだ。
女の勘、とでも言うのだろうか。
きっとあたしに用があるんだと何となく思った。
そう考えた矢先、彼女は振り返りゆっくりと口を開いた。