ノーチェ
彼女の肩越しに
夕立が弱まってるのが見える。
「薫、どこに行ったか知りませんか?」
彼女の問い掛けに
「…カオル…?」と反応したのはレジの前に立つ菜月。
一方のあたしは
彼女が言おうとしてる事がわかっていたから
表情を変えずに、
「…知りません。」と答えた。
本音を言えば
話そうかどうか、正直悩んだ。
薫とこの人がどうゆう関係かわからないけれど
あの古びたバーの場所をあたしの口から教えてはいけない、と心の奥底で警告が鳴ったのだ。
と言うよりも
どちらかと言えばむやみに他人の事情に首を突っ込むのは避けたかった。
それにそもそも
あたしと薫はそんなに深い関係じゃない。
ただ合コンで出会って
車で送っただけ。
そう、それだけだ。