ノーチェ
「ありがとうございましたー。」
気のない営業スマイルを返してレジを閉める。
外の景色はクリスマスらしく色とりどりに染められて、店を通り過ぎるカップルがやけに目についた。
「あーぁ。あたしもデートしたぁい。」
カウンターに頬杖をついて溜め息をこぼす菜月は指先で髪の毛をいじって遊んでる。
「この後するんでしょ?」
「んー、でももうこんな時間だし。」
そう言って菜月が向けた視線の先には
夜の8時、5分前を指す掛時計。
「店長はうちらに任せてさっさと帰るしさぁ。」
「しょうがないよ、子供が待ってるみたいだし。」
「そうだけどさぁ。」
唇を尖らせて
「早く帰りたーい。」と駄々をこねる菜月はカウンターに顔を伏せた。