ノーチェ


その様子を見ていたあたしは、つい言葉にしてしまった。



「…何で?」

他人の事情にはなるべく関わりたくない。


「連絡、してあげなよ。」

そう思っていたはずなのに、口にせずにはいられなかった。




「百合子さんは薫と話がしたいんだと思う。だから……。」

流れで“薫”と呼んでしまった事に気が付いたけれど
それでもちゃんと言わなきゃ、と思った。




『お願いします。』


彼女のあの真っ直ぐなまなざしが焼き付いて離れない。



「連絡、だけでも…。」


そこまで話すと
薫は煙草を灰皿に押し付けて渋々、

「…わかったよ。」と言ってくれた。



その返事に
ここまで来たのは無駄じゃなかったと安堵の溜め息が漏れる。


よかった…。





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