ノーチェ
…雨と、笑顔
……………
「ん…っ、」
スプリングがギシっと軋む。
ほてる体が重なって
朦朧とする意識の中で桐生さんのキスを受けながら、ゆっくり瞼を開くと
月明りが彼を照らしていた。
――――…
「ごめんな、ずっと連絡出来なくて。」
シュッ、とマッチを横にずらし火をつけた彼は煙草に近付けて息を吸い込む。
そしてまだ燃えるマッチ棒をそのまま灰皿に捨てると
火は徐々に力なく、煙を上げて消えてしまった。
「…ううん、大丈夫。」
シーツに丸まりながらベッドの上で膝を抱えて座るあたしに
桐生さんが優しい視線を向けてくれる。
微笑みながらグラスに真っ赤なワインを注いだ彼は
ワイングラスを掲げてあたしに目で、飲む?と目配せした。
あたしは黙って首を横に振る。