ノーチェ
そう言った桐生さんは
ワインを飲み、そのままあたしに口付けた。
絡まる唇からワインの香りがする。
あたしは答えるように彼の首に腕を回した。
それが合図と言わんばかりに桐生さんはあたしをベッドに寝かせて唇を胸元に這わせる。
「…っ、桐生さ…ん。」
どうしてあたしの誕生日を知ってるの?
そう言おうとしたら再び唇を奪われた。
そして
「…もう、黙って。」
熱を帯びた視線が
あたしを麻痺させた。
「…んっ、あ…。」
シーツを握り締め、彼の動きに声が漏れる。
カタン、と音立てたワイングラスは
振動でカーペットの上に落ちて真っ赤な染みを作った。
彼があたしに触れる度に体が敏感に反応する。
もう何度目かわからない波の中で、あたしは意識を手放した。