ノーチェ
だけど無情にも時間は過ぎて、気が付けば既に深夜の1時過ぎ。
「ごめん、あたし先に帰るね。」
まだ半分程残ったままのビールを置いて
あたしは立ち上がった。
「えーっ、もう帰るの?」
「うん、ごめんね。」
引き止める菜月に顔の前で手を合わせる。
「本当、大丈夫?雨すごいけど。」
「うん、平気。通りでタクシー拾うから。」
心配してくれた啓介くんにそう伝えてカバンを肩に掛けた。
みんなに手を振り、店先にある傘立てから自分の傘を取り出すと
「じゃあ、またね。」
そう言って扉を閉めた。
外に出ると、啓介くんが言った通り雨は容赦なく降っていて
傘を差すとボタボタと耳障りな音が響く。
一歩踏み出すと
既に肩先が濡れてしまった。
「莉伊。」