ノーチェ
どこか晴れない気持ちとは裏腹に、高速を走らせるにつれ雨足は弱まって
目的地に着く頃にはすっかり雨は止んでいた。
だけど桐生さんが車を停めたのは何でもないただの畔道。
周りには田んぼが広がり雨上がりの少し湿った風に遠くのかかしが揺れてるのが見えた。
「…ここ?」
不思議に思い、戸惑いを隠せない瞳で桐生さんを見ると
「ちょっと降りようか。」
そう言って口角を上げた彼は先に車を降りる。
あたしも後を追うように車の扉を開けた。
田舎、という言葉が相応しい程真っ直ぐに伸びた畔道に
履き慣れたパンプスを降ろすと、その不釣り合いな音が何だか奥ゆかしく感じた。
静かな民家に
鳥の鳴き声が聞こえて
さわさわと風に揺れる稲穂が緑の絨毯のように見える。