I Know~俺たちは諦める恋ほど、溺れるように愛し合う~
【翔也】
―――バタン。
突然、乃愛が倒れ込んだ。
「乃愛!?」
戸田の声に俺は駆け寄る。
愛実よりも先に…
「おい、高野。高野!!」
「……」
俺は乃愛を抱き寄せて、強く呼ぶ。
「乃愛、どうしたの!?」
愛実が言う。
「おい、しっかりしろ!高…乃愛!!」
「「えっ…?」」
愛実と戸田が同時に聞き返すように言葉を零す。
人前で乃愛の“名前”を呼んだのは、これが初めてだった。