先生と呼ばないで【完】
「ほ、本当だ…」
ありえない。赤いトマトソースが結構豪快に顎についている。
私の方が大人なのに…教師なのに…こんなことって。
「ほら、これで拭きなよ」
八神君がウェットティッシュで私の顎を優しく拭いてくれた。
その行為があまりにもスマートで紳士的で…
周りの女性客の視線が痛かった。
八神君って、夜遊びとか色々やってきたけどやっぱりお坊ちゃまなんだな…
ふとした仕草が綺麗で、育ちが良いのがわかる。
「あ、ありがとう…」
「ふっ。本当に可愛いな小春ちゃんは」
私に見せる笑顔が優しすぎて辛くなる。
隣でずっとこの笑顔を見ていたかった。
でも私は決めたんだ。
今日で最後にするって。